初音蒔絵火取母

重要文化財
胴径14.6 高9.2
室町時代

ふくらみのある胴の形はあこだ瓜に似ていることから古くから「あこだ香炉」といわれていた。木胎の胴部全面に梨地を施し、研出蒔絵で松竹梅に鴬の図柄の中に、「はつね」「幾可」「せよ」の文字を松梅の間に配しているのは、源氏物語の初音の巻の「年月を松に曳かれてふる人に今日鴬の初音聞かせよ」をとり入れた歌絵。聞香とかけたしゃれた意匠であり松の大樹一本、老梅二本、梅の枝には阿吽の鶯二羽、金の薄板毛彫の技法、梅と文字は銀薄板を用いた金貝かながいの手法、根元の土坡に笹。 内部は黒漆の上に梨地、中に獣足形三脚のついた六弁花形金銅製薫炉を置く。 籠目状に透かした金銅製の火舎(火屋)を同じく金銅で縁どった置口にかぶせてあり、全体に均整のとれた優美な姿である。

〈 葡萄蒔絵螺鈿聖餅箱