2020年から境内において環境改善作業「大地の再生」に取り組み始め、丸3年が経ちました。
それ以前の東慶寺を知っている方からは、
「昔の方が手入れが行き届いていて綺麗だった」
「うっそうとしている」
「枯葉や草が残っていて、みっともない」
「掃除をさぼっている」
という厳しい言葉をかけられます。
この3年間で、そう感じられた方は是非、最後までお読みください。
戦前の東慶寺の境内には、最低限の建物とお墓が少し、あとは畑と雑木林でした。
戦後の高度成長に伴い、新しい建物を増やすために山を削り、墓地を拡張するために林を整備し、境内は石とコンクリートで歩きやすいように舗装され、戦後凡そ60年かけ、ほぼ今の境内の姿になりました。
コロナ流行以前の東慶寺は、1日に3〜5人で境内の掃除と手入れをしていました。
早朝の掃き掃除から始まり、草取りも年中していました。
それでも追いつかない時はシルバーさんにも手伝ってもらい、節目には、植木屋さんも入り、樹木の剪定も欠かさず続けてまいりました。
見た目にはよく手入れされ、綺麗な境内だったかもしれません。
しかし、台風のたびに、土砂崩れ、崖崩れ、倒木が起き、この数年は特に枯れる樹木が目立つようになりました。
時間も手間も、お金もかけて手入れしているのに、なぜ境内の環境は悪くなるのか。
その答えを教えてくれたのが矢野智徳さんでした。
コンクリートやアスファルトで地表は覆われ、地中の水脈も分断されてしまった。
人間本位の発展の代償は大きく、自然本来の環境を破壊し、大地全体が呼吸不全を起こしている。
呼吸ができていない土は硬く引き締まり、そこに生える草木は、なんとか生きようと太く硬い根ばかりが増える。
その結果、地上の姿は乱暴で荒々しいものになり、限界をこえた植物や大地は、枯れ、倒れ、崩れる・・
人間本位の環境整備により、むしばまれた者たちがどのような最期を迎えるか、大地や植物たちは身をもって教えてくれていたのです。
環境再生医として、全国各地で「大地の再生」という活動に取り組んでいる彼の考えを聞き、技術を見て、境内の環境改善を託し、この3年間、共に取り組んできました。
見た目だけの話をすれば、かつての境内の方が確実に綺麗でした。
しかし、汚く、荒れたように見える今の境内でも、
「陰湿な感じがなくなった」
「居心地が良くなった」
「雰囲気が穏やかになった」
そのように感じ取ってくださる方々も増えてきました。
風物詩だと思っていた梅の徒長枝はあまり伸びなくなり、紫陽花は花も葉も小さく穏やかに、品を取り戻しました。
スコップでも歯が立たなかった固い土は、移植ゴテでもサクサク掘れるようになりました。
しかし、何十年もの間、破壊し続けてきた自然環境が、魔法のように簡単に改善されるわけがありません。
淘汰という言葉通り、生きる力を取り戻した草木もあれば、適応できず、枯れるものもいます。
作業のスピードを越え、草も生え、枯葉もたまり、木々は茂っていきます。
環境改善と、境内としての美しさの維持、この二つをどう両立させていくのか。
課題はまだまだ多いです。
我々は「100年先の第一歩」と思って、取り組んでおります。
次世代のため、後を託す人たちのため、
本当の意味で、豊かで慈愛に満ちた境内環境を目指しております。
まだまだ発展途上の取り組みですので、ご支援ならびに、温かい気持ちで見守っていただきたく、心よりお願い申し上げます。
東慶寺住職
井上大光